ADR事例:就労不能損害について東電と和解 (1) |
事案の概要
申立人は50代の男性である。平成23年3月11日時点で、旧緊急時避難準備区域に居住し、やはり旧緊急時避難準備区域にあるA社で働いていた。
申立人の従前の住所地および勤務地とも、平成23年9月30日に緊急時避難準備区域を解除された。これに伴い、東電は平成24年12月をもって、この区域の就労不能損害の賠償を打ち切った。申立人は就労不能損害金を生活費の不足分に充てていたため、このままでは生活が行き詰まってしまうと考えた。
申立人は、東電に対し、申立人のかつての住所地が原発事故以前の環境を完全に取り戻し、住民全員が安全に帰還する事が実質的に可能になるまでの期間賠償を継続するべきであり、少なくとも、申立人の定年退職時までの期間に相当する収入相当額の損害賠償をすべきであるとし、和解仲介手続きを申し立てた。
東電は、当初、答弁書で、就労不能損害は平成23年3月11日から平成24年12月31日分までについて支払済であること、申立人が、アルバイトを転々としているとはいえ就労しているため、就職は不能とまでは言えないなどとし、申立人の請求を否認したが、平成25年1月1日から同年12月31日までの就労不能損害を支払うとの原子力損害賠償紛争解決センターの和解案に最終的に合意した。
(続く ふ)