福島原発事故とこれからの生活を考えるblog

by原発事故被害者支援司法書士団 team of shihosyoshi to support compensation for nuclear accident victims         

福島第一原発の事故で失ったものは何でしょうか?
様々なものが失われました。
失われたものを取り戻すために、何をすべきなのでしょうか。

2016年04月

原発損害賠償と相続(Part1)

相続手続きはお早目に

相続手続きはお早目に
 東日本大震災と、それに伴う原発事故から5年がたちました。
東北地方では、震災によって様々な問題が発生しています。
相続問題はその一つです。東京電力の不動産賠償においては、原則として 平成23 3 11日時点の不動産所有者に対して賠償がなされます。所有者が誰かは、登記簿上の所有者で判断されますが、相続登記が未了の不動産が多く存在することはご存じのとおりです。東京電力の賠償は、相続登記未了の不動産に対しても、ある一定の条件をクリアすれば取り敢えずなされることになります(下記東電プレスリーリース参照)。
東京電力に不動産賠償請求するにせよ、しないにせよ、いずれにせよ、相続手続きは早めに進めるべきです。というのは、たとえば不動産については相続の登記がなされなければ、売却や担保に入れてお金を借りることは困難になる等、様々な問題が発生する可能性があるからです。底地が未登記のままでは、金融機関からお金を借りて新築住宅や工場、お店を建築することが難しいということです。このように、相続手続きは、被災者の生活再建とも密接に関係しています。
また、後で述べますように登記未了のまま長く放置しておきますと、さらに相続人が死亡することで関係者が増え、遺産分割することが段々難しくなっていきます。例えば、亡きAさんの相続人である子Cさんがさらに亡くなりますと、Cの配偶者と子が関係者(数次相続人)となり、この人も含めて遺産分割しなければならなくなります。もし子が亡くなってまた孫も亡くなっていますと、相続人が全部で数十人になるということも稀ではありません。ですから早めの手続きが望ましいのです。
福島県や東北地方ではまだまだ未登記のまま放置されている不動産も多数あるそうです。
そこで、相続問題に対しての一般的な知識や相談のケース、東電の取り扱いなどをまとめてみました。


東京電力の賠償請求手続きに係る相続の取り扱い
プレスリリース 2013
宅地・建物・借地権等の賠償に係るご請求手続きの開始について
平成 25年3月29
「*4  相続登記がされていない不動産については、原則として、相続人の方全員を戸籍謄本などで確定していただき、遺産分割協議書や相続人の方全員の同意書によ り、ご請求者さまが当該不動産を所有されている、もしくは損害賠償請求権をお持ちであることを確認し、その持分割合に応じて賠償させていただくことになり ますが、上記の他にもご所有を確認させていただく方法について、一定の条件を満たす方を対象に緩和措置(原則二親等以内の相続人の同意書、公正証書による ご確約など)を実施させていただく予定です。相続等の登記がお済みでない資産については、今回の賠償では一旦保留とさせていただきます。」
*注:緩和措置…下記参照

プレスリリース 2013
田畑に係る財物賠償に関するご請求手続きの開始について
平成 2511 29
別紙2 田畑の所有の確認方法について
田畑の所有の確認方法について
 原則として固定資産課税情報と登記情報の「所在」と「面積」を合致させたうえで、納税義務者名義および登記名義の一致を以て対象となる田畑を所有していることを確認させていただきます。
なお、以下の理由により田畑の所有が確認できない場合につきましては、代替の証明書類で所有の確認をさせていただきます。
1.売買による所有権移転登記がお済みでない場合
不動産売買契約書により所有の確認をさせていただきます。
2.相続登記がお済みでない場合
遺産分割協議書や相続人全員の同意書により、所有の確認をさせていただきます。
なお、相続人全員の同意確認が困難な場合の対応として、次の方法もご用意しております。
(1)農地基本台帳等による方法
 以下の2点全てに該当し、「当該田畑について他の権利を主張される方がいないこと」をお約束いただける場合、当該田畑を相続により取得されたものとして、賠償させていただきます。
 ・ご請求者さまが当該田畑の固定資産税納税義務者となっていること
 ・当社事故発生日時点に、ご請求者さまが当該田畑の所有者であることを農地基本台帳もしくは耕作証明書(筆別表含む)で確認できること
(2)二親等以内の同意を得る方法
 以下の4点全てに該当し、「当該田畑について他の権利を主張される方がいないこと」をお約束いただける場合、当該田畑を相続により取得されたものとして、賠償させていただきます。
 ・ご請求者さまが当該田畑の固定資産税納税義務者となっていること
 ・ご請求者さまから二親等以内の相続人全員が同意していること
 ・当社事故発生日時点に、ご請求者さまが当該田畑の耕作者であることを農地基本台帳、耕作証明書(筆別表含む)、水稲生産実施計画書のいずれか一つで確認できること
 ・ご請求いただいてから(当社へご請求書が到着してから)3ヶ月間、他の相続人からの請求がないこと
(3)法定相続分による方法
 ご請求者さまに、戸籍謄本により相続人全員を確定していただき、法定相続分に応じて賠償させていただきます。
(4)公正証書による方式
 ご事情により他の相続人さまからの同意書をご提出いただけないご請求者さまについては、公正証書でのお約束(履行いただけない場合の法的措置に関する同意を含みます)による方法もご用意いたします。

                  (さくらい&いしかわ)


ご相談ください!原発事故被害者支援司法書士団の「無 料 相 談」
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 (受付時間:月~金(祝日を除く)10:00~16:00)

 

最近の原発損害賠償に関する情報(2016年4月)

最近の原発損害賠償に関する情報(2016年4月)

最近の原発損害賠償に関する情報(2016年4月)
 2017年3月までに避難指示解除との国の方針に対応し、ADRおよび訴訟による原発事故の賠償請求にも変化が見られます。
 原発被害の賠償は、中間指針で定められた損害賠償基準に定められたものに限定されるものではありません。原発事故の被害が発生していれば、中間指針で定められたもの以外でも、また、避難指示区域外でも損害賠償請求は認められます。
 原発事故により避難生活を余儀なくされたために生じた精神的苦痛に対して損害賠償を求めるものや、原発事故で古里を失った精神的損害を求めるもの、自主避難に関して損害賠償を求めるものなど、中間指針で定められた損害賠償基準という壁を超えて損害賠償請求する動きが活発化しています。
 損害賠償でお悩みの方やご不満がある方は、原発事故被害者支援司法書士団にご相談ください。
 原発事故被害者支援司法書士団では、原発事故被害を受けられた皆様のために「無料相談」を実施しています。
 お悩みの方、ぜひ、ご相談ください。(下記フリーダイヤルにお電話ください。)


「福島切り捨て許さぬ」 原発で農民組合などが抗議行動
農業協同組合新聞 2016.01.18 
 1月15日、ふくしま復興共同センター、福島県商工団体連合会、同県農民組合は、福島第1原発事故の対応について政府・東京電力(東電)に首相官邸前で抗議行動を行うとともに、政府に対し賠償方法などについて申し入れをした。
申し入れは、以下の5点。
▽国と東京電力に対し、営農損害の賠償について従来支払額の2倍一括払いの方針を撤回し、損害が続く限り賠償すること、
▽国は「2017年3月までに避難指示解除」との方針を撤回し、社会インフラや医療環境の整備、住民合意の尊重などがなされないままで解除を行わないこと。 
▽国民的合意がまったく得られていない「20ミリシーベルト以下」を根拠とするあらゆる施策を直ちに改めること、
▽住民の生活圏から20m以内と、人が日常的に立ち入る場所以外の森は除染を見送る方針を撤回すること、
▽東電は、農業の損害賠償で従来の支払い方法を勝手に変更して、支払いを打ち切ることはやめること


月舘の1114人、原発賠償ADR申し立て
2016/02/11 福島民報
 伊達市月舘町の布川、御代田両地区の368世帯、1114人は10日、原子力損害賠償紛争解決センターに裁判外紛争解決手続き(ADR)を申し立てた。 東電第一原発事故で精神的苦痛を受けたとして、 東電に一人当たり月10万円の慰謝料を求めている。
布川、御代田両地区は、飯舘村や特定避難勧奨地点が設けられた伊達市霊山町小国、石田両地区に隣接している。水道水の摂取の一時制限、農作物の出荷・作付け制限などがあり、住民は「健康への不安を抱えている」と主張している。  


宅地単価3000円引き上げ 東電、住宅取得の算定目安
毎日新聞2016年2月19日 地方版
2016年02月19日 福島民友
 東京電力は18日、原子力損害賠償紛争審査会の中間指針の改定に従って、「住宅確保損害」賠償の損害算定の目安である福島県都市部の1平方メートル当たりの平均宅地単価を見直した。平均宅地単価は、従来の3万8000円から4万1000円に3000円引き上げられる。単価変更の通知は2月19日から開始される。
 福島県では、地価が都市部を中心に上昇しており、土地価格の実勢に合わせるため見なおされた。


<原発事故>自主避難に賠償「救済の追い風」
2016年02月19日 河北新報
 2月18日、京都地裁は、東電原発事故で福島県から京都市に避難した自主避難者への賠償を東電に命じた。原告は、元会社経営者の男性ら5名。心的外傷後ストレス傷害(PTSD)を発症し、仕事も失ったなどとして、総額約1億8000万円の損害賠償を求めていた。三木裁判長は「精神疾患と原発事故には相当の因果関係が認められ、就労不能の状態は現在も続いている」と述べ、男性と仕事のパートナーだった妻に計約3000万円の支払いを命じた。
一方、子供らの請求については、十分な損害賠償額が既に支払われているとし、請求を棄却した。


<福島第1>賠償総額7兆円 格差も拡大
河北新報
 東電の原発事故賠償金支払い済みの額は5兆9167億円。内訳は以下のとおり。
・農水産物の出荷制限や風評被害に1兆4931億円
・1人月額10万円の精神的慰謝料1兆97億円
・営業損害賠償4536億円など。
賠償総額の見通しは7兆753億円に達する見込み。 


<原発ADR>有機米風評被害 生産組合申し立て
2016年03月08日河北新報
 岩手県南と宮城県北の農家10世帯で構成される無農薬生産組合(登米市)が7日までに、原発事故の風評被害による損害損害賠償を求め、原子力損害賠償紛争解決センター(ADR)に和解の仲介を申し立てた。
 同組合へは営業損失分として2013年まで年約500万円の賠償金が支払われたが、14年は300万円に減額された。 組合は有機栽培のもち米を約40ヘクタールで生産・出荷していたが、原発事故による風評被害で売り上げが激減したと主張している。


    (記事の要約は、筆者がしたものです。 いしかわ)
                               
(※このコメント記事は執筆者個人の見解であり、原発事故被害者支援司法書士団を代表するものではありません。) 

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兵庫県司法書士会シンポジウム 「東日本大震災から5年を考える 」(2)

パネルディスカッション -災害復興における各種専門家の役割と課題-

東日本大震災から5年を考える 」パネルディスカッション
-災害復興における各種専門家の役割と課題-

パネルディスカッションは、コーディネーターは島田雄三氏(兵庫県司法書士会)パネラーは室崎教授、森川憲二氏(弁護士)、古部真由美氏(東日本大震災県外避難者西日本連絡会代表世話人)の四氏によって行われた。
パネル1
(以下、各パネラーの発言のうちから筆者の印象に残ったものを要約して記していく。選択と要約は筆者の責任でなしたもので、誤りや発言者の意図と食い違いがあったらお許し願いたい。なお、()は筆者の補足である。)

古部氏(ご自身が茨城県からの避難者である。)
関西に避難している人たちに向けて関西で唯一の手帳(「関西暮らし、みてみて帖」暮らしのための様々な情報が載っている)や月刊情報誌(月刊まるっと西日本NEWSの発行をして、1800世帯に無料配布している。無料配布の予算が足りず金策に走っている。活動は暗中模索である。関西の避難者は、半数が福島県で残りの半数は関東から来ている。

 関西では、福島の複合災害(地震という自然災害と原発事故という人災の)の実態が知られていない。被害者の実体験が知られていない(被害者は語ろうとしない)。最近,専門家の知恵を借りる状況になってきた。これから専門家の力が必要である。

パネル2
森川弁護士
 阪神では人と人のつながりを重視したが、福島では、土地と故郷との結び付きが重要である。例えば墓など。また、専門家の役割についてこれを問い直す必要がある。 実務家として目の前のことをどう捉えるか。東北では自ら足を運んでいくスタンスが必要である。

 専門家の情報提供と相談システムの構築が必要で、そこで得た情報を行政にぶつけていくことや、政策提言がどこまでできているのか。行政からお金をもらってのコンサルタントや相談でよいのか。被害者は法は解らない。避難者は専門家ではなく行政のアドバイスで選択したケースが多い。そのために判断を誤ったケースもある。
 二重ローン、相続登記 抵当権付きの不動産の問題等専門家のアドバイスを受ける必要がある。そこに専門家の役割がある。しかし、士業の連携したアドバイス事業(まちづくりを含めた)が実現していない。
 県外原発事故避難者に特有の問題として、借り上げ住宅の供与打ち切りの問題がある。福島県は2016年度で打ち切られる。これは、間接的に帰還か移住を強制することになる。1人1人の避難、滞在、帰還の選択の保障をすべき。

室崎教授
 実は今まで、福島については発言を躊躇してきた。しかし、福島の問題を抜いてこの東北の問題を考えることはと出来ない。

海の音、鳥の声、土地、歴史とのつながりなどを、コミュニティ構成の要素として復興制度の中に組み入れる必要がある。福島の原発被害地への帰還は、放射能のリスクがあり、戻れない地もある。それを残酷でもはっきり言うことも必要だと思う。また、 つくられた対立の構造をどうしたらいいのか。
答えは明らかではない。お互いに支えながら進むしかない。日本の全体が福島は特殊と考えていないか。 

専門家の役割を改めて問い直す必要がある。専門家の持っている知識を十分に伝えていく、細かなシステムをどう作っていくか。また具体的に行政に提言していく必要もある。


感想まとめ
新聞によると、昨年阪神・淡路大震災20周年を迎え、今年の震災に関する催しは半減したという。このシンポジウム担当者も参加者が少ないのではないかと心配していたが、まずまずの入りであった。

兵庫県司法書士会は、震災に関する催しを継続して主催や後援してきている。
「続けていこと忘れないことが大事」であり、それが次に繋がっていく、今回のシンポジウムに参加してそう感じた。
また、司法書士は専門家として何ができるかもう一度考える必要がある。その上で、専門家集団の一部として、群馬司法書士会も兵庫県司法書士会も共に手を携え支援活動を継続していくべきだ。
原発事故被害者支援司法書士団も、このブログによる情報提供や被害者のための相談・ADR申立て等の活動を今後も続けていく。
                   (さくらい)
                               
(※このコメント記事は執筆者個人の見解であり、原発事故被害者支援司法書士団を代表するものではありません。) 

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