元司法書士佐藤さんの選択(1) |
元司法書士佐藤さんの選択(1)
相馬野馬追は、相馬小高神社を含む3つの神社の祭礼行事だ。元司法書士佐藤さんはその小高神社の前で事務所を営んでいた。事務所は自宅と兼用で、家族と共に震災前まで居住していた。
東日本大震災およびその直後の東電第一原発事故により佐藤さんの生活は激変した。避難生活を余儀なくされ、その後、どの避難者も辿った過酷な避難生活を過ごした後、やっとのことで仮設住宅に入居する。佐藤さんは一人で仮設住宅に住むことを選択、家族は川口市へ避難した。一家が離れ離れに避難生活を送ることは福島ではまれなことではない。
仮設住宅
仮設住宅
現在、佐藤さんは、南相馬市鹿島区の仮設住宅に住んでいる。
仮設住宅には、南相馬市の津波被害者及び原発被害者が入居している。猫および犬を飼うことが可能なためペットと共に暮らす入居者が多い。鹿島、および原町区の避難者は津波被害者、小高区の避難者は津波及び原発被害者だ。
佐藤さんは、仮設住宅での生活に次のような感想を持っている。「入居者の生活を観察していると男女で意識の差があるように見受けられる。概して、男性は現在の境遇・状況を受け入れることに消極的であり、本当はここに住む住民ではないとの思いが強いひとが多いように感じられる。一方、女性は意外と現在の環境に適合しているように思われる。自宅には、ほぼ毎日通っている人が多い。」
「自動車などに対するいたずらや賠償金に対するやっかみなどの被害がしばしばある。」
「自動車などに対するいたずらや賠償金に対するやっかみなどの被害がしばしばある。」
佐藤さんは司法書士は廃業したが、相談に来る人には相談に乗っている。
「入居者は元司法書士の佐藤という名で相談に来る。遠隔地の名古屋などに相談に出かけたこともある。」「相談に来る人は解決能力のある人が多いように見受けられる。自分で相談をしに来る事ができる人のみ相談に来る印象だ。問題は、相談に来ることさえもできず、決断もできない人たちをどうするか、どう支援するかという課題にいかに対処するかということだ。」
現在、復興住宅建設の加速や住宅損害賠償金の支払いがされた等の事情の変化により、仮設住宅から復興住宅へ、あるいは帰還を諦めて新たな地で住居を構える等、仮設住宅入居者の移動が進んでいる。
このまま今の動向が続けば、次に来るのは、入居者が減少に伴う仮設住宅の統合という方向に進まざるをえない将来が見えてくる。仮設住宅に残る入居者の多くは高齢者だ。もし、そうした状況が生まれかねないとすれば、仮設住宅の生活の中で、せっかく作り上げられた本人と周りのつながりも無視されることになり、その結果、仮設住宅に残ったままの高齢者の孤立化が進むことになるのではと危ぐされる。孤立化が進むことで、かつての阪神淡路大震災の際に起きた高齢者の悲劇が再び起こる事態になることだけは避けたい。
「神戸の二の舞いになってはならない。」と佐藤さんは語気を強めた。
(いしかわ)
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