原子力損害の賠償に関する法律の虚実 |
原子力損害の賠償に関する法律(原賠法)の制定過程を、国会議事録検索によって見てみました。
この法律は昭和36年の第38国会で成立しており、科学技術振興対策特別委員会で審議されています。
参考人として原子力委員会原子力災害補償専門部会長 我妻榮氏らが質疑に応じており、それなりに興味深いものです。
原賠法は、そのタイトルからして原発事故による損害賠償を行うための法律には違いありません。しかしこの法律を作ったのは、損害賠償をきちんと行う為ではないことがわかりました。
法律の目的は「この法律は、原子炉の運転等により原子力損害が生じた場合における損害賠償に関する基本的制度を定め、もつて被害者の保護を図り、及び原子力事業の健全な発達に資することを目的とする」となっています。被害者の保護と原子力事業の健全な発展が目的として併置されているわけです。
日本における原子力事業は、ごく一部を除き、民間事業者が行なっています。原発事故が起きて巨額の損害賠償がなされた結果、事業者が倒産する事態は、「原子力事業者の健全な発展」を阻害することになる。そこで、そのような自体を招かぬよう、事業者の能力を超える損害賠償については国が支援することになっています。つまり、この法律による限り、東電を法的整理する選択肢ははじめからなかったことになります。この法律は、原子力事業者が事故によって倒産するリスクを排除する目的を持っていたと言ってよいでしょう。
また、無過失責任と責任の集中がセットで規定されました。
(無過失責任、責任の集中等)
第3条 原子炉の運転等の際、当該原子炉の運転等により原子力損害を与えたときは、当該原子炉の運転等に係る原子力事業者がその損害を賠償する責めに任ずる。ただし、その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるときは、この限りでない。
2 前項の場合において、その損害が原子力事業者間の核燃料物質等の運搬により生じたものであるときは、当該原子力事業者間に書面による特約がない限り、当該核燃料物質等の発送人である原子力事業者がその損害を賠償する責めに任ずる。
《改正》平26法134
第4条 前条の場合においては、同条の規定により損害を賠償する責めに任ずべき原子力事業者以外の者は、その損害を賠償する責めに任じない。
この法律によって「責任の集中」を規定する必要があったのは、原発メーカー(GE)が、事故発生時の損害賠償請求を危惧したため、この懸念をなくす必要があったからです。
原賠法は、被害者のための法律と思われがちですが、それは一面でしかなく、その本当の目的は、民間事業者による原子力発電事業を日本に導入するための仕掛けであったのです。
このような法律の性格(原発力事業者の健全な発展を期する、関連事業者の責任を排除する)は、原賠機構の運用など、様々な面に影響しているのではないでしょうか。
(さいとう)
(さいとう)
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