福島原発事故とこれからの生活を考えるblog

by原発事故被害者支援司法書士団 team of shihosyoshi to support compensation for nuclear accident victims         

福島第一原発の事故で失ったものは何でしょうか?
様々なものが失われました。
失われたものを取り戻すために、何をすべきなのでしょうか。

シンポジウム・研修会・講演会

「8年目の福島を考える」群馬司法書士会で講演・研修会

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 令和元年7月6日(土)、本支援団は「8年目の福島を考える」ー原発事故避難者の現状を南相馬市小高区から見るーと題する講演・研修会を群馬司法書士会で行いました。


 講演・研修会の趣旨は「原発事故から8年が経ちました。未曾有の大人災であったにもかかわらず、その風化が進み、事故被害者・避難者の今が顧みられることも少なくなりました。しかし、憂うるべき問題は山積みしています。原発事故をもう一度振り返り、今の避難者の現状を認識して、できることを考えてみたい。」というものです。

講演は4部構成でなされました。

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第1部、原発事故とは何であったかを振り返りながら、被災者の住居形態の推移を説明し、被災当初に家族が2つ、3つと分断され、その状態が8年経った今でも多く続いているとの指摘がなされました。

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第2部 第1部の家族の分断を起点に地域社会の何が失われたのかを「事故前と後で生活環境はどうかわったのか」の図と被災地等のスライド写真をつかい個別具体的な説明がされました。    

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第3部 原発事故による損害賠償請求で何が争われているかを埼玉訴訟の題材に現状説明がされました。説明の中では、訴訟の中で重要と思われる事実や証拠が出されているが、これについてマスコミの報道はほとんどないとの指摘がなされました。

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第4部 ビデオをみながら、南相馬市小高区の現状を説明し、被災地の現場で起きている問題点が指摘されました。
                                         (さくらい)

「災害時の住宅に関する法律問題」シンポジウム:兵庫県司法書士会(終)

第二部 パネルディスカッション「災害時の住宅に関する法律問題」(要約)
第二部 パネルディスカッション
「災害時の住宅に関する法律問題」(要約)
 パネリスト 塩崎賢明 立命館大学政策科学部 教授
       森川憲二 弁護士
       古部真由美 東日本大震災県外避難者西日本連絡会代表世話人
 コーディネーター 島田雄三 司法書士
(筆者の責任で要約しています。)
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塩崎先生
 「基調講演の続きの内容,イタリアでは,市民安全省本部で,常時警戒監視をしている。地震災害が生じた場合は1時間以内に会議を行う。応急仮設住宅やキッチンカー等は近隣の備蓄された自治体から送られる。会議の策定されたプランに合わせてセミプロのボランティアが連動して動く。日本の場合は,各市町村単位で災害対策を行う。今日までに,国レベルでは,何度も大規模災害を経験しているのにその経験が生きていない。災害関連死が多いのは,応急体制のレベルが低いから。避難所では雑魚寝を強いられている。省庁の縦割行政も問題だ。」
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森川先生
「阪神発生当初,兵庫県弁護士会館も民間の避難所となった。阪神では,避難所や災害直後の法律相談会の運営に携わった。この経験を生かし,その後発生した中越地震やこの度の東日本でも日弁連の災害担当者と現地を回った。現に起こった災害には復興支援し,将来起こり得る災害に備える。2017年9月に,塩崎先生と共同代表を務める阪神淡路まちづくり支援機構の名称が「近畿災害対策まちづくり支援機構」に変更された。近畿一円の専門家職能団体をまとめる必要がある。」
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古部さん
「まるっと西日本では,関西2府6県へ自主避難する避難者を支援している。そもそもは,県外避難者に対する電話相談を行っていた。現在では,毎月情報誌を発行し,関西へ避難する避難者の元へ届けている。ただ,組織自体で避難者リストを持っていないので,各府県を通じて避難者に情報提供を行っている。
塩崎先生
「日本では,阪神でも東日本でも,多額の復興財政を投じているが,その効果が疑問である。省庁の縦割行政が問題だ。イタリアでは,歴史的には各地が都市国家として発展した後,中央集権化したため,災害時には,マニュアルに沿って粛々と進められる。日本では,知識・経験が生かされない。東日本以降,日本では復興庁が設置された。東日本の復興がミッションだが,今一つ権限が与えられていない。各省庁からの寄集め集団で,2~3年で人が入れ替わる。基本的には市町村任せ。東日本では,既に24兆円も使われているのに…。今後,検証が必要だが,現時点で,どこも専門的にはしていない。会計検査院はしているが,あくまでも,国会予算がその目的に沿って使われているかのみで,その利用・使用が適切であるかまでは判断しない。」
森川先生
「避難者の声が反映されていない。災害復興が行政目的になっており,被災者等にとって何が必要であるかが明確でない。例えば,防災集団移転推進事業に財産的な瑕疵がある被災者等が参加し,その後,時間の経過と共に,参加要件を満たさないことが判明しても,既に決定された計画がそのまま進んでしまう。
古部さん
「復興庁の予算の98%が国交省関連予算である。避難者は避難先市町村へその旨の届出しなければ「全国避難者情報システム」に登録されないので,市町村間で情報が共有されず行政支援上避難者として取り扱われないが,残念ながら末端の市町村に徹底されていない。
森川先生
「阪神の経験が,被災者生活再建支援法に結実した。

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塩崎先生
「お金の使い方と効果について,阪神での被害総額は約10兆円で,復興予算は16.3兆円。東日本での被害総額は約16~19兆円で,復興予算は25兆円。東日本復興支援法では,活力ある日本の再生が目的となっている。そのため,被災3県以外の場所で約3兆円が防災を名目に使われている。被災地でも防潮堤工事が盛んに行われいるが,L1津波は「100年に1度」の頻度,L2は「1000年に1度」であるので,防潮堤工事の優先度は決して高くない。
古部さん
「復興予算の使われ方について,ゆるキャラの費用になったりもしている。神戸市や大阪府でまっとうな使われ方もある。」
会場からの発言
「イタリアの市民安全本部に関連して,日本では自衛隊が頑張っている。」
塩崎先生
「自衛隊はあくまでの応急的な対応が中心で,その後の住まいや生活再建では関与しない。」
森川先生
「復興予算の有効性については,例えば,被災地別に北から南まで,リストアップする必要がある。そろそろ総括する必要もある。」
会場の和歌山県司法書士会会員からの発言
「南海トラフも予想され,県南部でシンポを開催してほしい。」
森川先生
「近畿各府県でも弁護士・司法書士等専門家の数も異なり,会員数の多い単位会と比較すると1桁位の違いがある。南海トラフでは被災単位会で対応するのではマンパワーの問題で限界がある。近畿単位で考える必要がある。」
塩崎先生
「南海トラフでは,避難のことが中心となっているが,避難は災害対策のほんの一部に過ぎない。」
森川先生
「災害対策では,①命 ②被災予測地域への情報提供 ③まちづくり協議会をフォローできるような法的仕組(例えば,条例等)構築する。現状では,被災住民の自主的な活動に対する行政支援が薄い。」
古部さん
「社会が考える復興と被災者が考える復興とは異なる。災害が起こる前に支援策を知っておく必要がある。」
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終了
                (おかだ)

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「災害時の住宅に関する法律問題」シンポジウム:兵庫県司法書士会(2)

「災害時の住宅に関する諸問題~諸外国の実例を踏まえて~」

「災害時の住宅に関する諸問題~諸外国の実例を踏まえて~」(要約)
基調講演 講師 塩崎 賢明 立命館大学政策科学部教授
(筆者の責任で要約しています。)
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阪神・淡路大震災(以下,「阪神」)では,「避難所」⇒「応急仮設住宅」⇒「復興公営住宅」の単線型住宅復興がなされた。この類型の問題点として,この流に沿った被災者又は避難者(以下「被災者等」)は支援を享受することができたが,この流に沿うことが出来なかった若しくは,独自の方法を試みた被災者等には,支援が乏しく支援の格差が生じた。
東日本大震災(以下,「東日本」)では,複雑多様な選択肢の「混線型住宅復興」がなされている。これは阪神の教訓を生かした側面もあるかもしれないが,東日本の災害特性から生じたものと考えられる。
 つまり,阪神では(被害が)家屋等の倒壊が中心であったが,東日本では,津波や原発が原因で,地域全域が壊滅的に破壊され,「点」ではなく「面」で被災した。極論すれば,壊れた建物を建替えれば復興した阪神とは異なり,東日本では,住宅復興の前に市街地復興(街づくり)を行う必要があった。
 日本では,ピンチをチャンスに変える発想で,災害復興を地域発展に結びつけてきた。その代表例が「東京」であるが,阪神以降,『復興の街づくり』モデルが,経済の低成長期や縮退の時代を迎えている今日に於いて,時代にそぐわなくなっている。

応急危険度判定・罹災証明・応急修理制度
 「住宅の被災程度と再建支援制度の体系および事業制度」の「応急危険度判定」は,本震後の余震による倒壊の危険性,外壁・窓ガラス・付属設備の落下などの2次災害の防止を目的としている。
 「住家被害調査と罹災証明」は,この罹災証明がその後の公的支援等に大きく影響する。住宅被害だけで支援内容が決定されるため,自宅はさほど被害を受けていないが,自宅に隣接する工場建物が全壊し,仕事が全くできない状況でも,自宅に損害がなければ,公的支援の範囲が著しく限定的となる矛盾がある。
 「応急修理制度」は,災害救助法による現物給付の制度である。大規模半壊・半壊で自らの資力で修理できない者で,修理により自宅生活できること(避難所を利用せず,仮設住宅も利用しない。)等の要件がある。この制度の最大の問題点は,この制度を利用すると他の公的な支援が受けられないことだ。また,補助限度額57万6000円(熊本地震の場合)と少額で、この額では充分な修理ができない。

応急仮設住宅・みなし仮設
「応急仮設住宅」は,災害救助法により被災都道府県が建設する。使用期間は2年でその後は1年毎の延長が可能である。阪神は5年で終了,東日本は7年での終了が予定されている。
 阪神では4万戸の仮設住宅を建設した。ただ,伊勢湾台風災害以来の大規模災害であったため対応力という観点から様々な課題を残した。
 阪神での仮設住宅団地の問題点として,孤独死者数が233名にも上り,地震災害で九死に一生を得たのにもかかわらず,すまいや生活再建途上で命を落とすことになった。
 東日本では,木造住宅仮設や借上げ仮設住宅(みなし仮設)は被災者等には好評であるが問題もある。熊本地震では,更に木造仮設住宅建設の取り組みが進んだ。
 みなし仮設では,元々居住用賃貸物件であるので居住性のは高い。ただ,県・オーナー・被災者等の3者での定期借家契約で入居するため,法律関係が不明確になりやすい。また,被災者等が地元でみなし仮設対象物件を,見つけるのが困難である(そもそも賃貸物件数が多くない。)ため,みなし仮設に入居するために地元を離れるケースが多く,市町村での被災者等の把握が難しくなる。
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災害公営住宅・自力再建支援
「災害公営住宅」は,災害公営住宅法に基づき建設され、被災者等に提供される。自力再建できない被災者等にとって,住宅確保のセーフティネットとして重要であるが最善の方法でもない。理想的には,自分の気に入った場所に,自分の気に入った建物を再建することである。仮設住宅と同様,阪神では復興公営住宅で1026名が孤独死している。
 建設から約20年経過した阪神の災害公営住宅の問題点としては,高齢化とリーダー不在が挙げられる。
「自力再建支援」について,阪神後の1998年に「被災者生活再建支援法」が制定された。2007年11月に抜本的な改正がなされ,国からの支援金が最大300万円に増額された。

イタリアの震災復興
 イタリアの震災復興について,1992年2月に,「災害防護国民サービス設置法」が制定され,首相府に「市民安全省」が設置された。同省の地下オペレーションルームでは,3交代制で24時間365日,国内各所が常時モニタリングされ,災害が発生した場合には,1時間以内にトップ会議が開催され,マニュアルに基づいて支援計画が作成される。また,ボランティア組織網も全国に張り巡らされており,日本のボランティアのように泥かきをするという訳ではなく,日頃から研修を受けた半ばプロフェッショナルなボランティアである。

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               (おかだ)

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「災害時の住宅に関する法律問題」シンポジウム:兵庫県司法書士会

「災害時の住宅に関する法律問題」シンポジウム:兵庫県司法書士会

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庫県司法書士会 主催「災害時の住宅に関する法律問題」シンポジウム
平成30年1月28日 チサンホテル神戸
 平成30年1月28日(日曜)の午後1時30分から、JR神戸駅前の「チサンホテル神戸」で、今年度もまた、兵庫県会で、「震災(災害)復興のシンポジウム」が開催されました。
 登壇者は、立命館大学政策科学部教授の塩崎賢明先生、森川憲二弁護士〔ご両名とも、近畿災害対策まちづくり支援機構※の共同代表です〕)および、まるっと西日本(東日本大震災県外避難者西日本連絡協議会)代表世話人の古部真由美さんの3名、コーディネーターは 兵庫県会の島田雄三司法書士がつとめました
 シンポジウムの大枠の主題は、これまでと同様に、大規模災害から復興における住宅(住居)に関する問題を考えるというものでした。外の厳しい寒さとは裏腹に、会場は白熱したやり取りで熱気に包まれていました。以下は、その要旨です。(要旨は筆者の責任で要約しています。)

原発事故被害者支援司法書士団からの報告・櫻井裕
 パネルディスカッションの冒頭に、原発事故被害者支援司法書士団からの報告がありました。報告者は群馬県司法書士会櫻井裕名誉会長。以下は、その要旨です。
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「2017年11月に,福島県浪江町を訪問したことを踏まえ,福島第一原発事故に起因する被災者等を巡る課題として次の3点が挙げられる。
①夫婦・親子等の家族関係の分断の固定化
避難当初から問題視されていた家族の分断、たとえば妻子は県外に避難し夫は県内に残って働いている、また老いた父母は帰還し、子供らは別に居住しているといった状態が7年もの間継続し固定化している。これは由々しき問題である。  
② 住民の孤立化。
仮設住宅の多くは今年の3月までで終了するが、まだ行先が決まらず仮設住宅にとり残された人の高齢化孤立化が進行している。また、復興住宅に入居した人たちも仮設住宅で形成されたコミュニティが解体される中での孤立化が懸念される。県外避難者も同様である。
③リーダーの不在(喪失)
避難当初自治会長であった方は,財力も能力も兼備されているので,比較的早く住宅再建を果たし仮設住宅を後にした。リーダーの不在が問題をより深刻化しているように感じる。
 
 その他,いわき市内の災害公営住宅建設現場で,
写真撮影を試みようとした際に,工事関係者から撮影を拒否された。この例のように,写真撮影や仮設住宅内を巡回する場合には,例えボランティアであっても自治会長の許可が必要となっていたりしている。こうした閉鎖性も問題だ。」
*基調講演パネルディスカッションは、次回以降に掲載します。
                (おかだ&いしかわ)

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ぐんま暮らし応援会「交流会・説明会」に参加

ぐんま暮らし応援会「交流会・説明会」に参加
                   
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 福島県から群馬県に避難している人のための「交流会・説明会」が、8月27日(日)群馬県社会福祉総合センターで開催された。主催は「ぐんま暮らし応援会」である。
  同会は東日本大震災で群馬避難してきた人を支援するため、群馬のNPO等各団体が構成員となって平成24年9月に結成れた団体である。現在は福島県からの業務委託をうけ、訪問支援活動や拠点相談活動を主に行っている。このブロクを運営している司法書士団もその一構成員である。
 当日は残念ながら、避難をしている人の来訪はなかったが、福島県の避難支援課の職員による「福島県の復興の現状と取組等について」の報告等がなされた後、支援活動に携わる者の間での意見交換が行われた。
そのなかのものを少し紹介する。
 今年3月の仮設住宅借り上げ住宅の終了にともなう、住居の問題は群馬ではあまり混乱なく移行したようである。参加した群馬県職員の説明によれば、県営住宅では申込の資格は原則一般の人と同じだが、本人が希望すれば同じ部屋にすめるようにしたということである。
 これに関連して家賃の負担が必要となったので、生活苦から賃料滞納の例がみられるとの報告もあった。今後は避難者の方々一人ひとり個別的な生活の相談支援が重要になるのではないかとの意見が出た。
 また、福島県からの委託事業については、訪問支援活動を行う支援員と拠点相談活動を行う相談員の活動をもつと柔軟に連携がより密にがとれるよう考えて欲しいと、の要望が福島県になされた。
                (さくらい)

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南相馬市社会福祉協議会主催講演会の講師

南相馬市社会福祉協議会主催講演会の講師

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 南相馬市にある、介護予防デイサービスセンター「サポート拠点元気塾」にお邪魔
しました。
 そこで私たちは、「相続について」講演をさせていただきました。
主催は南相馬市社会福祉協議会、福島県司法書士会が支援して開催された講演会です。
聞いていただいた皆さんは、元気塾に通所している15人の方々です。年齢は平均推定70から80才過ぎと思われます。女性の方が多かったようです。
このブログに掲載(ブログ画面左端カテゴリー相続(7))されたものを題材に、「相続」と「成年後見」について二人で掛け合い漫才のように、わかりやすく話させていただきました。「元気」という塾の名のとおり、皆さんお元気で、講演中には笑いや質問も飛び出し、賑やかな会となりました。
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講演会の前に、施設の近くの「かしま福幸商店街」で昼飯をとりました。「かしま福幸商店街」は、プレハブ造りの仮設商店街です。
ラーメン屋さんが営業しておりましたので、そこで美味しいラーメンをいただきました。
通り沿いにある商店街入口にあった看板には、11店舗の店舗名が記載されておりましたが、営業中の店舗はラーメン屋さん1店舗でした。
看板には「がんばろう ふくしま!」のタイトル文字が書かれていました。その下には、
「この施設は東日本大震災で被災された事業者等にご利用いただくため、南相馬市および中小機構が鹿島商工会の協力のもと共同で整備しました。事業再興の場としてお役に立てていただきたいと願っております。」と、この商店街の設置の目的が書かれていました。
現在、ほとんどの店舗は営業している様子もなく、既に閉店した模様です。
東日本大震災から6年余、この商店街の役割もその目的を終わりつつあるように見えました。

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  (さくらい&いしかわ)                     

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兵庫県司法書士会シンポジウム「 災害列島における防災と復興を考える 」 (3)

兵庫県司法書士会シンポジウム「 災害列島における防災と復興を考える 」 (3)

パネルディスカッション
「復興の課題と今後の備え~住宅問題を中心として~」

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森川弁護士
 東日本大震災の仮設住宅建設費用は700万円、阪神淡路大震災では400万円だった。
いろんなものを積み上げると一世帯1000万円ほど国が支出している。1000万円の資金で家は建つ。現に、熊本地震では1000万円で住宅の計画販売がされようとしている。居住を確保するための支援方法を大胆に変えていくという必要性がある。その可能性はあるのに国はやっていない。
塩崎教授
計画では、高台移転事業のコストは、宅地整備費が1戸あたり4326万円、移転民間住宅費用は6583万円だ。6000万円以上支出して立地へ移転することが適切なのだろうか。自力再建に対する補助金とどちらが安いのだろうか。高額な高台移転事業より自力再建を選ぶというのが、市民的には正しい感覚ではないのか。国民経済的に見ればむちゃくちゃな計画だ。
古部氏
生活再建を考えるときに、避難者は、仕事に就いていると帰りたくても帰れない。帰って生活が成り立つのかも不安だ。
避難者はいろんな悩みや不安を抱えている。県外避難者にも、お互いさまで受け入れる日本でいてほしい。命を応援する制度が必要と感じる。
塩崎教授
県外移住になんでそんなに問題が生ずるのか。
復興の主体は地方自治体であるのが原則だが、その原則によって日本国内で生じている不平等を解消する必要がある。
森川弁護士
岩手県では、住宅新築に最大565万円+100万円の上乗せ支援を行う。宮城県でも一部市町村によっては上乗せ支援を行う。現状は自治体で支援に差異がある。
その差異をなくす、あるいは小さくするためにはどうしたらいいのか。国レベルの制度システムや支援を充実させる必要がある。できるだけ平等化にするシステムの構築が望まれる。
塩崎教授
東日本大震災では、復興予算はほとんど国から出ている。しかしそれは最初だけだ。
予算がいかない所には、まったくいかない。
森川弁護士
現物支給の原則から資金援助へ、災害救助法の法律を改正する必要があるだろう。
古部氏
住宅支援終了に伴い、市営・県営住宅等の無償入居が原則終了する。避難生活を継続する避難者のために福島県が県外に住宅を確保したとの報道が最近あったが、他県にも広がってほしい。
塩崎教授
被災者は、当初、被害をわかっていなくて、だんだんとわかってくる。行政も同様。
被災者が直面するトータルの問題をわかっている人、考えている人は誰もいない。
これが根本の問題だ。

まとめ
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古部氏
被災県と関西の支援情報を受け取るには「全国避難者情報システム 」の登録が必要だ。
住宅支援終了に伴う住み替えによって引越した後も情報を受け取るためには再登録が必要。引越し前に必ず再登録をする事が重要だが、被災者は知らないことが多い。システムが途絶えないように、広報する必要性がある。
森川弁護士
二重ローンの問題等、被災者に責任はないのに、人生をかけた財産をすべて失った被災者に対して、個人で何とかしなさいとするのは苛酷である。復興に資金をかけるのは平等の原則に基づく憲法の要請である。
現在の制度に良い点もある。良い点を活かしつつ改善すべき点は早急に改善していくべきだろう。
復興まちづくりには住民合意形成が重要である。住民に判断材料を提供し合意形成を促進するためにも、
常日ごろからの専門家、ボランティアのアドバイスを受けられるシステムを構築する必要性がある
塩崎教授
災害の経験・教訓に基づいて、残すべきことを整理し、来るべき大災害に備えなければならない。
特に欠けているのが復興に対する備え、これに力を注ぐべきである。災害の後に対する意識を持つことが必要だ。


兵庫県司法書士会は、震災に関する催しを継続して主催・後援し続けている。
「続けていくこと、忘れないことが大事」であり、それが阪神・淡路大震災および東日本大震災の教訓を次に繋げていく原動力となる。また、東日本大震災から6年が過ぎようとしている今、一人一人が何ができるかもう一度考える必要がある。共に手を携え支援活動を継続していく必要もある。今回のシンポジウムに参加してそう感じた。
原発事故被害者支援司法書士団も、このブログによる情報提供や被害者のための相談・ADR申立て等の活動を今後も続けていきたい。  
    (内容の要約は、筆者によるものです。 いしかわ)
                     

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兵庫県司法書士会シンポジウム「 災害列島における防災と復興を考える 」 (2)

パネルディスカッション「復興の課題と今後の備え~住宅問題を中心として~」
パネルディスカッション「復興の課題と今後の備え~住宅問題を中心として~」
パネリスト 塩崎賢明(立命館大学政策科学部教授)
     森川憲二(弁護士)
    古部真由美(東日本大震災県外避難者西日本連絡会代表世話人)
    コーディネーター 島田雄三(司法書士)
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パネルディスカッションは、コーディネーターは島田雄三氏(兵庫県司法書士会)パネラーは塩崎賢明教授、森川憲二氏(弁護士)、古部真由美氏(東日本大震災県外避難者西日本連絡会代表世話人)の四氏によって行われた。
(以下、各パネラーの発言のうちから筆者の印象に残ったものを要約して記していく。選択と要約は筆者の責任でなしたもので、誤りや発表者の意図とは違う場合があることをお許し願いたい。)
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古部氏(ご自身が茨城県からの避難者である。)
関西に避難している人たちに向けて、月刊情報誌「月刊まるっと西日本NEWS」(暮らしのための様々な情報が載っている)の発行をして、1700世帯に無料配布している。
避難者のための相談窓口を開設したり、帰省費用助成支援等の事業もしている。
自主避難者に対する福島県の住宅支援は原則3月に終了する。帰還をしない、あるいはできない自主避難者のために住宅支援の延長をすでに決定した自治体もある一方、「延長を検討中」や「未定」の自治体も多い。
「まるっと西日本」では、住宅支援のスムーズな延長をサポートするため、府県や市町村に対し格差のない支援が行われるよう訴えるとともに、被災者からの声を受け止める相談窓口を開設している。
高齢の自主避難者は、仕事が見つからない人が多い。それらの人達の中には、住宅支援が終了すると生きていけないと訴える人もいる 。無償の住宅支援は生活の維持・再建に欠かせないシステムだ。住宅支援の終了は深刻な問題だ。今後の方策がみつからない。行く末が暗い 。
Q:夫は福島で生活し、妻子は避難している方々の現状はどうか 。
 実際、家族での移住は増加している。分裂したままに生活している母子の避難も多い。避難者は、将来について家族で話し合いをしているが、折り合いがつかず、離婚に発展するケースも増えている 。

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森川弁護士
復興の課題と今後の備えに関して次の3点をあげておく。
最初に、制度面。
自然災害は、日常的に発生する。南海トラフ地震をメインとする、大規模災害の発生の確実性も高い。
被災予想を正確に立て備えとして何が必要か早期に目標設定をする必要がある。将来の災害に備え、制度的備えの整備・拡充を図るべきだ。
県外への原発事故避難者に特有の問題として、借り上げ住宅の供与打ち切りの問題がある。福島県は本年3月で原則、支援を打ち切る。これは、間接的に帰還か移住かの選択を強制することになる。1人1人の避難、滞在、帰還の選択の自由を保障をすべきだ。
2番目として資金面の改善の必要性。
災害が発生した場合に備えて、資金面でも事前にやっておくべきことを検討する必要がある。資金の備蓄の必要性もある。
番目として人と組織の問題をあげておきたい。
被災者および住民団体への自治体の支援や地域ごとのネットワークの形成を図ることが必要だ。
ボランティア・専門家が災害に対する支援について何ができるのか整理することも必要。     
災害法制や復興まちづくり法制についての情報提供・伝達の重要性を再認識し有効な実施策を支援することも必要だ。
Q:立法提言を弁護士団体等はやっているのか。
日弁連は、災害復興支援委員会を中心に、立法提言をしている。
 
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塩崎教授
災害に対する日本人の意識について、備えを本当に重要だと思っているのか疑問を持つことがある。
例えば、私が住んでいる京都を例にあげれば、大部分の市民は、大災害を気にしているし、その危険性はわかっているが、災害が発生した場合に実際どうなるのか予測がつかない人が多いと感じる。
そのためか、建物の耐震改修は進んでいない。お金がないのが最大の理由だが、仮に、お金があったら改修工事をするかと問えば、貯金すると答える住民が多いのが現状だ。
災害はいつ来るかわからないという不確実性が内在する。住民一人一人が、個人住宅は実は公共性があるという考えに至るかどうかが鍵ではないだろうか。
備えのための予算は、何兆円も計上されているが、有効に活用・使用されるのだろうか。日本の行政はしっかりしている。しかし、半面、住民に向いていない傾向が見られる。
                  (続く いしかわ
                     

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兵庫県司法書士会シンポジウム「 災害列島における防災と復興を考える 」(1)

基調講演「復興の課題と今後の備え~住宅問題を中心として~」

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「 災害列島における防災と復興を考える 」シンポジウムが兵庫県司法書士会の主催で、平成29年1月21日(土) チサンホテル神戸で開催された。
 シンポジウムは、塩崎賢明立命館大学政策科学部教授の「復興の課題と今後の備え~住宅問題を中心として~」と題する基調講演のあと、「復興の課題と今後の備え~住宅問題を中心として~」についてパネルディスカッションが行われた。
 このシンポジウムは、東日本大震災及び原子力発電所事故の被災地、被災者及び被害者、その他頻発する災害への支援を継続することを確認すると共に、震災から20年が経過した兵庫県における復興の過程を検証し、東日本大震災の被災地の復興を考え、今後発生する災害で想定される諸問題にどのように対処していくのか、特に住宅に関する問題に焦点をあてて行われた。


基調講演
「復興の課題と今後の備え~住宅問題を中心として~」
 塩崎賢明立命館大学政策科学部教授
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講演内要旨
(講演内容は筆者のメモと記憶から起こしたので、誤りや発表者の意図とは違う場合があることをお許し願いたい。)
 塩崎教授は、「日本は、災害大国です。」と話をはじめる。
 災害大国日本は、太平洋プレート、フィリピン海プレート、ユーラシア・プレート、北アメリカプレートがひしめき合うきわめて特殊な国土であり、世界で発生するM6以上の地震の約2割が日本周辺で発生、分かっているだけでも約2,000の活断層が存在し、世界の活火山の約7%(110)が日本に分布するという。
災害リスク
 「自然災害は必ず起きる。防げない事象だ。被害を最小限におさえるのが減災という考え方。国の防災戦略では、被害を半分に減らす目標が掲げられている。市町村の地域防災計画は大半が緊急対応で、予防・復興はごくわずかだ。 
 一方、人的災害(原発事故等)は、めったに起こらない。防ごうと思えば防げる。」

復興の現状一何が問題か
「東日本大震災の被害状況は、死者15,894人行方不明2,561人関連死3,410人孤独死190人(3県)自殺154人(3県)全壊128,931戸、半壊269,045戸、一部損壊736,323戸だ。」
間接被害である関連死が多い。直接死に対する関連死の割合は、18・5%と高い。福島県では直接死に対する関連死の割合では、関連死の方が多い。関連死は過酷な避難所生活、避難所への移動が主な原因だ。」
「東日本大震災では、5年を経た現在でも、17万人の避難者がいる。福島の避難者は約9万人、県外に4.3万人避難している。仮設住宅に7万人が未だ居住している。災害公営住宅の完成は約5割というのが現状だ。
復興が進まない原因はどこに問題があるのか。
お金がない?→すでに26兆円。今後6.5兆円が予定されている。
お金をたくさん使っているが、その使途がはっきりしない。東日本大震災復興基本法の問題点がある。」

住宅復興
「住宅再建の前にまちづくりの問題を先行してやらないと行く先が決まらない。復興災害を繰り返してはいけない。身の支に合わない巨大開発はやってはいけない。」
原発「自主避難者」への住宅供与の打切りが進んでいる。いわゆる「自主避難者」=区域外避難者への住宅供与は、2017年3月で打ち切り(12600世帯)となる。月収21.4万円以下の世帯には、2年間補助、上限3万円(1年目)、2万円(2年目)民間賃貸住宅家賃補助が予定されているが十分とはいえない。
区域外避難者の多くは2重生活などに苦しみ、被災者向けの災害公営住宅も対象外。
また、政府は避難区域の指定解除を推進している。」
恒久住宅の確保には、自力再建、災害公営住宅の2つの選択肢がある。災害公営住宅は、約3万戸計画、5割程度の完成している。入居後の生活問題。コミュニティ維持管理問題が重要な問題点。
また、仮設から恒久住宅へ行きたくてもいけない人々がいる。そうした人たちの孤独化が増進し、ひいては孤独死に至るような事態が起こらないようにする計画が必要だ。これからどうなっていくのか、一番の心配事だ。」

次なる巨大災害への備え
「原発災害の発生を防ぐこと、自然災害の被害を減らす事が必要。
自然災害の被害を減らすためには、 ①事前の予防、②緊急対応、③復旧・復興が不可欠。
防災計画は②緊急対応中心になっている。復興計画はほとんど考慮外。」
「最近の研究では、日本列島を載せているプレートは小さなピースに分割されており、別々の方向に動いている。
 日本は地震多発&原発密集の国であり、世界の地震の2割以上が日本で発生(1994~2003年、M6.0以上の地震)している。その狭い国土に54基の原発がある。原発災害対策は、特別に重要だ。
 巨大地震が多く、原発が多い国は日本だけ。世界のどの国とも異なる特殊な条件のもとにある。フクシマの対応に数十年かかり、その間にもう一度起これば、日本破滅。日本では原発全廃しかない。」
「災害後の復興対策「復興への備え」が重要だ。
復興の大目標=被災者の生活再建である。とりわけ、災害で助かった命を失うことをなくすこと、すなわち、関運死を防ぐことが重要だ。具体的には、避難所における福祉避難所、医療施設、簡易ベッドなど人間的生活の確保などが考えられる。
「健康で文化的な最低限度の生活」の保障「国はすべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」とする憲法の規定は、「災害時は除く」わけではない。日本の避難所の生活状況は先進国とはいえない。被災者・国民全体の意識改革が必要だ。
 関連死だけは、止めてほしい。ほとんど犯罪に近い。」
 

塩崎教授のお話から、防災・復興の課題がおぼろげながら見えてきた。震災を契機に、防災・減災の意識は高まりつつある。しかし、復興の過程における問題の解決にはほど遠い現状も垣間見えた。特に、住まいの問題の解決には、単なる居住空間の問題ではなく住宅生活全般に関わる複合的な視野が必要だと感じた。
                                  (いしかわ)
                     

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兵庫県司法書士会シンポジウム 「東日本大震災から5年を考える 」(2)

パネルディスカッション -災害復興における各種専門家の役割と課題-

東日本大震災から5年を考える 」パネルディスカッション
-災害復興における各種専門家の役割と課題-

パネルディスカッションは、コーディネーターは島田雄三氏(兵庫県司法書士会)パネラーは室崎教授、森川憲二氏(弁護士)、古部真由美氏(東日本大震災県外避難者西日本連絡会代表世話人)の四氏によって行われた。
パネル1
(以下、各パネラーの発言のうちから筆者の印象に残ったものを要約して記していく。選択と要約は筆者の責任でなしたもので、誤りや発言者の意図と食い違いがあったらお許し願いたい。なお、()は筆者の補足である。)

古部氏(ご自身が茨城県からの避難者である。)
関西に避難している人たちに向けて関西で唯一の手帳(「関西暮らし、みてみて帖」暮らしのための様々な情報が載っている)や月刊情報誌(月刊まるっと西日本NEWSの発行をして、1800世帯に無料配布している。無料配布の予算が足りず金策に走っている。活動は暗中模索である。関西の避難者は、半数が福島県で残りの半数は関東から来ている。

 関西では、福島の複合災害(地震という自然災害と原発事故という人災の)の実態が知られていない。被害者の実体験が知られていない(被害者は語ろうとしない)。最近,専門家の知恵を借りる状況になってきた。これから専門家の力が必要である。

パネル2
森川弁護士
 阪神では人と人のつながりを重視したが、福島では、土地と故郷との結び付きが重要である。例えば墓など。また、専門家の役割についてこれを問い直す必要がある。 実務家として目の前のことをどう捉えるか。東北では自ら足を運んでいくスタンスが必要である。

 専門家の情報提供と相談システムの構築が必要で、そこで得た情報を行政にぶつけていくことや、政策提言がどこまでできているのか。行政からお金をもらってのコンサルタントや相談でよいのか。被害者は法は解らない。避難者は専門家ではなく行政のアドバイスで選択したケースが多い。そのために判断を誤ったケースもある。
 二重ローン、相続登記 抵当権付きの不動産の問題等専門家のアドバイスを受ける必要がある。そこに専門家の役割がある。しかし、士業の連携したアドバイス事業(まちづくりを含めた)が実現していない。
 県外原発事故避難者に特有の問題として、借り上げ住宅の供与打ち切りの問題がある。福島県は2016年度で打ち切られる。これは、間接的に帰還か移住を強制することになる。1人1人の避難、滞在、帰還の選択の保障をすべき。

室崎教授
 実は今まで、福島については発言を躊躇してきた。しかし、福島の問題を抜いてこの東北の問題を考えることはと出来ない。

海の音、鳥の声、土地、歴史とのつながりなどを、コミュニティ構成の要素として復興制度の中に組み入れる必要がある。福島の原発被害地への帰還は、放射能のリスクがあり、戻れない地もある。それを残酷でもはっきり言うことも必要だと思う。また、 つくられた対立の構造をどうしたらいいのか。
答えは明らかではない。お互いに支えながら進むしかない。日本の全体が福島は特殊と考えていないか。 

専門家の役割を改めて問い直す必要がある。専門家の持っている知識を十分に伝えていく、細かなシステムをどう作っていくか。また具体的に行政に提言していく必要もある。


感想まとめ
新聞によると、昨年阪神・淡路大震災20周年を迎え、今年の震災に関する催しは半減したという。このシンポジウム担当者も参加者が少ないのではないかと心配していたが、まずまずの入りであった。

兵庫県司法書士会は、震災に関する催しを継続して主催や後援してきている。
「続けていこと忘れないことが大事」であり、それが次に繋がっていく、今回のシンポジウムに参加してそう感じた。
また、司法書士は専門家として何ができるかもう一度考える必要がある。その上で、専門家集団の一部として、群馬司法書士会も兵庫県司法書士会も共に手を携え支援活動を継続していくべきだ。
原発事故被害者支援司法書士団も、このブログによる情報提供や被害者のための相談・ADR申立て等の活動を今後も続けていく。
                   (さくらい)
                               
(※このコメント記事は執筆者個人の見解であり、原発事故被害者支援司法書士団を代表するものではありません。) 

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兵庫県司法書士会シンポジウム 「東日本大震災から5年を考える 」(1)

災害復興とまちづくりの課題 
 「東日本大震災から5年を考える」シンポジウムが兵庫県司法書士会の主催で、130日神戸チサンホテル神戸で開催された。
 シンポジウムは、室崎益輝神戸大学教授の「災害復興とまちづくりの課題」と題する基調講演のあと、「災害復興における各種専門家の役割と課題」についてパネルディスカッションが行われた。


シンポジウム1
基調講演
「災害復興とまちづくりの課題 」神戸大学室崎益輝 名誉教授

(講演内容のうち私が重要と考えたものを「」内に記し、私の感想をコメントしていく。なお、講演内容等は筆者のメモと記憶から起こしたので、誤りや発表者の意図とは違う場合があることをお許し願いたい。)
 

 室崎益輝教授は、「坂上田村麻呂からです。」と東北の話をはじめる。「東北と沖縄は同じ構造で、それは先住民が住んでいたところを大和による占領(支配)があった。その格差が根底にある」という。同感である。政府の震災復興策、東京電力の原発被害者への対応、これに対する東北の被災者、福島の被害者の態度の根底にはその影を感じとらざるを得ない。

「国の施策も東北をよくすることは二の次で、日本経済日本全体を良くすることが、東北地方をよくするという構図である。東北の世直しの目標が見えてこない。復興予算のかなりの部分(9割)は県外に出て行ってしまって、中で循環しない」。


教授は続けて、災害の特質と復興について「災害は、その時代・その社会が内包している矛盾や課題を、時代を顕在化させる。それゆえ復興では、その矛盾と向き合いその克服をはかることが避けられない」と述べる。
そうすると、東日本大震災は、高齢化や希薄になりつつ人間関係や家族関係という問題だけでなく、日本という国の中での東北の従属的地位まで顕在化させているのではなかろうか。

復興と復旧について、「質の変化を伴わないのが復旧で、質の変化を伴うのが復興だ」とする。「復興は、今までの誤りを正していく、未来を創造することだ、それが創造的復興だ」「しかし、この言葉が歪曲されて、大規模工事中心になっている。例えば石巻市の高台集団移転は、従来の集落を無視している」

復興の目標は、「自立・安全・変革の三つである。」「東北では安全についての考え方に間違いがある。人は安全だけでは生きていけない。景観や文化と総合的に考えなければならない。たとえば高さ20mの堤防がそうだ。阪神淡路大震災は自立を優先、東日本大震災は安全を優先させている」。
高さ20mの堤防がどんなものだか私には想像がつかないが相当の高さである。海とともに生きてきた人たちにとって海と切り離されたと感じるかもしれない。震災前と同様に海は見えるのだろうか。

復興の課題について、「人間復興とコミュニティーの復興は車の両輪。環境の共生、歴史自然を含めたコミュニティーの形成が大事。しかし行政は合意形成のスピードを優先し物事を決めていく。突然のアンケートが来て、考える間もなく物事が決定される。だから結果には、俺は参加していないから俺のせいではない、となってしまう。」
住民が自分たちで十分話し合って、アイデアも出し合って決めることが重要だ。またその決定を実現できる予算も必要であろう。

住宅再建と生活復興について、「住宅再建だけでなく、コミュニティーや地域経済さらには地域福祉の再建を含め、生活復興を包括的に進める。今後は、避難所-仮設住宅-復興住宅といった単線型の再建プログラムをやめ、多様な選択肢を提供し、被災者の自発性を引き出すプログラムに変えるべき」。たとえば、仮設住宅と復興住宅建築には一家族あたり相当程度の費用が掛かっている。被災者が最初から自宅を再建すると選んだら、これらの費用相当額を給付するという施策をとるという方法等がある。そうすれば被災者は複数の再建プログラムから自分で再建策を決めていくことができる。

その他にも多くの内容があったがその要旨だけ述べておこう。
・復興システムの見直し「焼ないように死なないようにする (復興ニーズを少なくする)」
・復興法制の見直しについて「後追い的な規制の法制度では対応しきれない。事前の対応が必要。新しく実態に即した法を作る必要がある」
復興規制の見直しについて「復興のためにどこまで私権を制限するのか」
・復興まちづくりについて「防災から減災そして復興へ。巨大災害には防災ではなく減災を、目指すべきではないか.
・都市計画から「まちつくり」へ。「街」でも「町」でもない「まち」である。 
                  (さくらい)
                               
(※この記事は執筆者が講演内容を要約したものです。) 

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「阪神・淡路大震災と住宅問題~東日本大震災の復興につなぐ~」

神戸市長田区の商店街
 20年前の平成7年1月17日兵庫県南部を、後に阪神淡路大震災と呼ばれる巨大地震が襲った。
 震源に近い神戸市市街地を中心に被害は甚大・壊滅的で、死者6434名、行方不明者 3名、負傷者43792名の人的被害を生じた。多くの家屋、施設が倒壊し、また、地震直後に生じた火災のため多数の建物が焼失した。
 シンポジウムで取り上げられた神戸市長田区の新長田駅周辺の工場、店舗、住宅、アパート等が密集した地区も例外ではなく、多数の尊い命が奪われ、建物のほとんどは破壊・焼失した。
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 その、新長田駅に降り立つと、駅前の若松公園に聳える巨大な鉄人28号(高さ18m)が迎えてくれる。
 新長田駅から続く商店街が、駅周辺で最も賑わいを見せていた大正筋商店街だ。
 阪神淡路大震災後、大正筋商店街一帯は神戸市主導で復興再開発事業が行われ、震災前の木造家屋の密集した地域から、住居と商業施設が一体となったモダンなビルディングへと変貌した。

 20年経過した今、商店街を訪れると、再開発の歪が顕在化しているのが間にあたりに感じられる。シャッターが閉まったままになっている店が目立ち、買い物客の肩が触れ合うほど活気があったという震災前の賑はまったく感じられない。
 全く人通りが変わってしまった商店街で、旧来からの商店主は多額のローンを抱え、被災以前より増した共益費や固定資産税の負担が重くのしかかっている。新たな生活を求めて、商店街を離れようにも、価値が著しく下落した店舗の買い手は容易には見つからない。
 いわゆる「復興災害」と呼ばれる震災復興の歪みが、今なお、被災した方々を苦しめている。
長田4

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 東日本大震災の被災地でも、長い過酷な仮設の生活から、恒久的な生活設計へとその舵が切られようとしている。阪神・淡路大震災で生じた「復興災害」という歪みが、今後、同じように東北で起きてしまうことは避けたい。
 住まいの問題を解決することは、復興政策の根幹のひとつだ。適切な復興を成し遂げるためには、震災及び原発事故の被害受けた方々の声に耳を傾け、より良い適切な復興案を策定することが、まず求められる。
                 (いしかわ&さくらい) 


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「阪神・淡路大震災と住宅問題シンポジウム~東日本大震災の復興につなぐ~」

震災シンポジウム 参加報告

兵庫会シンポ

 去る1月17日(土)「阪神・淡路大震災と住宅問題シンポジウム~東日本大震災の復興につなぐ~」と題するシンポジウムが兵庫県司法書士会で開催された。

 このシンポジウムは、震災から20年が経過した兵庫県における復興の過程を検証し、東日本大震災の被災地で想定される諸問題にどのように対処していくのか、特に住宅に関する問題に焦点をあてて行われた。

 さて、シンポジウムの主題である住宅問題、阪神・淡路大震災の復興過程における「復興災害」についてどのように考えるべきか。
 立命館大学政策科学部の塩崎賢明教授から次のようなご報告があった。

 阪神・淡路大震災以降の孤独死は1000人を超え、借り上げの公営住宅に入居している方は、そのほとんどが高齢者世帯となっているが、今、20年の賃貸期間満了を理由に退去を要請されるという事態が起こっている。
 神戸市新長田地区での再開発では、旧来からの商店主は多額のローンを抱え、全く人通りが変わってしまった商店街で、被災以前より増した共益費や固定資産税の負担が重くのしかかっている。そこから離れようにも、価値が著しく下落した店舗の買い手は容易には見つからない。
 そのような震災復興の歪みが、いわゆる「復興災害」と呼ばれるもので、今なお、被災した方々を苦しめている。
 東日本大震災の被災地では、阪神・淡路大震災を契機に改善された点も多々あるが、まだまだ制度としては不十分な点があり、今後同じような問題に直面することが懸念される。
いざ大規模な震災が発生してしまうと、その復興には非常に長期の期間を要する。

震災を契機に、防災の意識は高まりつつある。しかし、復興の過程における法的な援助という観点から見ると、十分とはいえない現状が見えてくる。被災者の方が、法的・専門的な側面でのアドバイスを得られるということは、復興の過程での重要な要素である。
我々司法書士等の専門職はその一翼を担う職責を負っていることを自覚し、その役割をを果たすべきだ。
 住まいの問題を解決することは、復興政策の根幹のひとつだ。
長期的に、震災及び原発事故の被害受けた方々の声に耳を傾け、より良い解決策を検討していきたいと思う。
                               (イシガミ)


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放射線被爆の正しい理解とその対応 福島県の甲状腺調査のなぞと課題


「低線量被ばく」に関する講演会報告
放射線被爆の正しい理解とその対応
福島県の甲状腺調査のなぞと課題
~何が間違っているのか?何がわからないのか?~

 平成26年4月15日(火)、主催兵庫県弁護士会、共催兵庫県司法書士会、日本弁護士連合会で標記講演会が開催されました。講演会に出席させていただきましたので、簡単ではありますが、そのご報告をさせていただきます。
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 まず、講師の郷地秀夫先生について簡単にご紹介いたします。
先生は、元東神戸病院院長で、精神科・神経内科・リハビリテーション科・緩和医療などに携わりながら被爆者医療に取り組んでこられました。現在は東神戸診療所所長で、核戦争を防止する兵庫県医師の会代表、原爆症認定訴訟・支援ネット兵庫共同代表であられます。
長年臨床医として原爆症認定訴訟に関わってこられたということで、被災者(被爆者)側の立場から、そして放射線障害の専門家としての立場から、福島第一原発事故による放射線汚染、国・自治体の対応等の問題点に関して、非常に分かりやすくお話をしていただきました。

 次に、講演会の内容に関してですが、まず先生が第一に強調されたのは、「今般の原発事故以降発生している甲状腺がん等の健康障害に関して、放射能の影響があるということも、ないということも現時点では断定することができない。」「放射線の専門家というのは、元来放射線を利用・使用するための専門家であって、放射線障害の専門家ではないことが殆どである。今被災者に起こっている様々な健康障害と放射線との因果関係に関しては、基本的には不明というべきで、安易に因果関係を否定も肯定もするべきではない。そして、大事なのは、健康被害に関して放射線の影響によるものかもしれないという視点から、現在起こっている事象を出来る限り記録すること、それを把握することである。」ということでした。
このような視点は、先生が原爆症認定訴訟や被爆者医療に携わってきた中で、それまでの専門書、国の主張の誤りを正すために研究し、被爆者の権利擁護に寄与されてこられた経験からくるものです。
それでは、具体的に現時点で発生している放射線被害をどのように把握すべきかということで、福島県民健康調査の結果について、先生の知見と様々なデータからのお話がありました。
 専門性の高いお話で、理解不足による誤りがあってはいけないので、詳細についての記載は遠慮しようと思いますが、事実として、平成25年12月31日現在、上記県民調査によって甲状腺検査の結果悪性若しくは悪性の疑いがあるとされた方が75人いるということ。人口1万人あたりの甲状腺がんの発症数が、川内村36.8人(1人)、大玉村14.7人(2人)、浪江町6.21人(2人)、大熊町5.18人(1人)、郡山市3.89人(21人)、福島市2.55人(12人)、いわき市1.77人(8人)(( )内はいずれも実際の発症数)などということ。調査は平成23年度以降、放射線量が高い地域から順次実施されていること。一方、一斉に大規模な集団全員を対象に検査を行うことにより、潜在的ながんが発見されるという、いわゆるスクリーニング効果についても、もちろんご説明がありました。その上で、調査が行政主導で実施されることによって恣意性が入ること、情報が適切に開示されているのか疑問があること、その他様々な要因を考えると、今後、さらに健康被害が発生しているということが明らかになるのではないかと危惧されていました。そして、外部被曝と内部被曝の違いが無視され、内部被曝の影響を過小に評価している現状を鑑みると、今後、その発生した健康被害について因果関係をめぐる争いが長期化・複雑化することになるであろうということでした。

 これらのことは、東北や関東から避難をされておられる方々は非常に敏感に感じ取っていると思われます。そのため、実際に様々な相談を受ける際には、我々は専門家でないため、放射線障害に関する独自の見解を述べることはありませんが、そういった見解があるということは重要な前提知識であると感じます。避難されておられる方々がどのような思い、不安を抱いているかいう点に関してあまりに無知であると、そこから話が全く進まなくなります。低線量被ばくという理系色の強い、我々には馴染みが薄い分野の講演ではありましたが、今後相談を受ける際の、相談者との認識の共有という点でも非常に有意義な講演でした。

 2時間の講演会では、ご準備いただいたレジュメの3分の1程度しか進みませんでした。先生のお立場から非常に興味深いお話をいただきましたが、もう少し時間があればいいのにという絶妙のタイミングで終了ということになってしまいました。先生も、機会があればこの続きを話したいということでしたので、次回是非ともこの続きをお聴きできればと思います。
(イシガミ)

東日本大震災と住宅問題シンポジウム~阪神・淡路大震災の経験から~(11・最終回)

各パネリストの発言 ジャーナリスト 藍原寛子氏
                              

間もなく震災から3年 ― 被災地(福島県)の今 ―

シ9

地震・津波の規模の大きさと原発事故との複合災害が、復旧・復興を長引かせている。福島ではいまだ「震災後」が継続している。避難者は全国各地にちらばり、行政支援が追いつかず、取り残されてしまった避難者・被災者がいる。福島県は、3地方に分断されてしまった。1つめは、人が住まなくなった町。ここでは、荒れ果てた農地や家で野生動物が走り回っている。2つめは一見震災前と同じように商店、企業、学校、地域活動など日常生活が始まっている地域。3つめは発災時に避難者を受け入れた地域。ここでは現在も仮設住宅が建ち並び、浜通りからの避難者が居住している。

福島県内の被災者が抱える問題

福島県における東日本大震災の特徴は、原発事故を伴う複合災害であること。食料資源を供給する農業生産地が放射能で汚染されてしまった。現在も原発周辺の13万8千人が避難しており、仮設住宅や借り上げ住宅で生活している。大家族は分散し核家族化が進んでいる。多額の賠償金を得た人は、新たに土地建物を購入する人も多く、周辺のいわき市、福島市、郡山市などで住宅建築ラッシュがおきている。一方、賠償金を打ち切られた高齢者を中心に仮設住宅では明日の米にも困るような生活困窮者が増加しているという。

生きることと「土地」住まい」の意味

避難者がまず求めたのは「居場所」であった。土地は、人間にとって、食料生産地、先祖伝来の資産、心のふるさと、災厄から人間を守る保養地など、様々な意味を持つ「命の源泉」である。この「土地」が奪われたことは単なる土地問題にとどまらない。土地は生業や未来への希望につながるから。避難した人も避難先で「居場所」を探し築いている。同様に福島に残った人は我が土地を守る。それぞれに形の違った福島の「オキュパイムーブメント」である。生活の拠点としての仮設住宅を含む被災者の住まいが、日々、誇りと自信を取り戻す場になることが必要である。

(ふ・完)

    

東日本大震災と住宅問題シンポジウム~阪神・淡路大震災の経験から~(10)

各パネリストの発言 まるっと西日本 古部真由美氏
シ8

東日本大震災による県外避難者向け公営住宅の入居期限が、今年3月末で無償入居の期限を迎える。このまま住み続けられるのか、退去しなければならないのか、有償になるのか、被災者は不安をかかえながら生活している。避難元の自治体から恒久住宅への移行を促されたり、避難先自治体が行う「意向調査」により精神的に追いつめられる被災者も多い。

 古部氏が代表世話人をつとめる「まるっとの西日本」では、昨年12月、関西2府4県の府県、政令市、市あわせて42自治体と1団体に対し、県外避難者向け公営住宅第2回入居期限調査を行った。3年を超えての延長をすでに決定した自治体もあれば、「延長を検討中」や「未定」の自治体も多い。「まるっと西日本」では、住宅支援のスムーズな延長をサポートするため、府県や市町村に対し格差のない支援が行われるよう訴えるとともに、被災者からの声を受け止める相談電話も開設した。また、メディアに対し、「まるっと西日本」のこれらの活動を取り上げてくれるよう積極的に呼びかけ、多くの新聞で、公営住宅の入居期限の問題が取り上げられた。公営住宅の入居期限の問題が新聞記事になると、翌日入居期限延長を発表した自治体もあったとのこと。(ふ・続く)

                              

東日本大震災と住宅問題シンポジウム~阪神・淡路大震災の経験から~(9)

各パネリストの発言 弁護士 森川憲二氏

阪神淡路大震災と東日本大震災の主な対比

シ6

阪神淡路大震災は都市直下型地震であり、建物倒壊と火災による被害が大きかった。復興が進むにつれもとの土地を使えるようになった。一方、東日本大震災は、大規模津波と原発事故による被災・被害により、もとの被災地・被害地が使えない、あるいは、いつ使えるか不明であることが特徴である。また、多くの被災者が住宅密集地の借家人であった阪神淡路大震災に比べ、東日本大震災の被災者は持家を持っていた被災者が多い。

東日本大震災における立法措置と制度の運用および法制度の立法的改善の問題

 東日本大震災の被災者は、農漁村を含めた持家被災者が多く、当然ながら持家再建を希望している。しかしながら、被災者生活再建支援法による支援(基礎支援金最大100万円、加算支援金最大200万円)や災害弔慰金制度を利用しても、それだけでは持家再建の資金には足らず、これを断念する被災者も多い。さらに、もともと住宅ローンを抱えている被災者も多い。二重ローン問題を解消すべく個人版私的整理ガイドラインの運用が期待されているが、相談件数4704件のうち成立したのはわずか563件(H25.9.27現在)である。阪神淡路大震災時と比べ、恒久住宅再建の施策も多様化してきいる。任意買取方式の事業(防災集団移転促進事業、漁業集落防災機能強化事業、津波地域復興拠点市街地整備事業)、法定の手続による事業(都市再生区画整理事業、市街地再開発事業)、災害公営住宅整備事業など、多くの選択肢があり、被災者はどれを選んだら良いか迷ってしまっている。いるのが現実であろう。支援に対する自治体間の格差も大きい。岩手県では、住宅新築に最大565万円+100万円の上乗せ支援を行う。宮城県でも一部市町村によっては上乗せ支援を行う。また、仙台市では被災者の集団移転を促すため、移転先の市有地の借地料を最大50年間免除する独自の支援策を決めている。

 なお、原発事故被害地では、復興の前提として事故の収束、除染、汚染土処理、居住地等の安全性の調査・点検とこの安全性の確認されたエリアの判断、損害賠償にかかる多くの課題等の解決を要するのは言うまでもない。(ふ・続く)

東日本大震災と住宅問題シンポジウム~阪神・淡路大震災の経験から~(8)

パネルディスカッション報告

シ4

パネリストは、第1部で基調講演をつとめた塩崎賢明氏、弁護士森川憲二氏、東日本大震災県外避難者西日本連絡会「まるっと西日本」代表世話人の古部真由美氏、ジャーナリスト藍原寛子の4名。兵庫県司法書士会の島田雄三氏がコーディネーターをつとめた。各氏とも阪神淡路大震災の際には、それぞれの立場から、被災地、被災者のための活動、研究、取材などを行っている。現在も、その経験を活かし東日本大震災の被災者支援に当たっている。(ふ・続く)

東日本大震災と住宅問題シンポジウム~阪神・淡路大震災の経験から~(7)

建設計画の作成までの歩み
宮

現在194所帯が居住している仮設に隣接する復興住宅がなぜ65戸の計画に至ったのでしょうか?この計画作成までには次のような動きがありました。自治会では、復興住宅建設のために住民の意向調査を記名式で2回行っています。その結果、およそ100件の有効回答を得ました。しかし、どちらの調査も全体中の回答率は約50%で、ほぼ半数の所帯からは回答を得られませんでした。富岡町でも、自治会の調査の後、8月に改めて住民意向調査を実施し、最終的なその調査結果で、60世帯の住民が復興住宅に入居したい意向を示しました。それら調査の結果として、建設計画では65世帯分の建設が予定されました。ただし、なんの回答も示されなかった方たちがいたことに、鎌田自治会長は「心残りがある」と言っています。「50%の人達が意志を表明されないので、今何を思っているのか全くわからない。取り越し苦労かもしれないが、先行きを考えると様々な問題が起こる様な気がする。」自治会長はこのように心配されています。未回答が50%であることをどう考えるのか。何故回答がないのか、それとも回答できないのか、2年半もの過酷な仮設住宅生活が原因で精神的に疲れて果てているのか。家族や仕事、お金や賠償問題など様々なことが絡み合って、まだ決められないのでしょうか。これはひとくくりにはできない問題で、行政のきめ細かいサービスやフォローが必要なところでしょうし、我々、被害者支援のための団体も心にかけていくべき問題だと思います。

おわりに

福島県の二つの地区についての現状報告をさせて頂ました。どの地区でも、それぞれの被害者がそれぞれの苦悩 を抱え、将来の生活設計を真剣に考えています。しかし、その度合いにはかなり温度差があります。故郷に帰るのか、または、新しい場所で新しい生活を始めるのか、戸惑い決断できずにいる方が現実にいらっしゃる。そして、そういう方たちにも決断をしなければならない時間が迫っていることは間違いありません。こうしたことを見据え、私たちは今、何ができるのでしょうか。答えは、簡単には見つかりません。しかし、私たちは、諦めることなく、希望を持って、今後とも 被害者の方に寄り添い続けたいと考えています。(み・この章は終わり)

東日本大震災と住宅問題シンポジウム~阪神・淡路大震災の経験から~(6)

大玉村の復興住宅について考えます。

大玉村安達太良応急仮設住宅は福島県の中通りにあり、そこに暮らしておられるのは、原発事故で富岡町から避難してきた住民の方々がほとんどです。富岡町は現在、帰宅困難区域、居住制限区域、避難解除準備区域の三つに分かれており、住民が今後の生活を考えるうえで、見通しがつきづらい地域であると言えます。現在、この仮設住宅には194世帯が居住しています。この仮設住宅団地の自治会は、いち早く見守隊による巡回や、高齢者の安否確認のための黄色い旗活動(旗を目印とした一人暮らしの高齢者の方の安否確認)等を通じて、仮設住民の孤立や孤独死をできるだけ防ぐ活動を行ってこられました。我々群馬司法書士新聞でも、一昨年の6月号で「見守りの黄色い旗・安達太良仮設住宅の取り組み」という記事で、その活発な自治会の活動を称賛しております。ある意味理想的な自治会を形成してきた仮設住宅です。私達が、昨年、復興住宅の取材で再び訪れたときも、集会場には、大玉村の人々の様々な交流の写真、自治会で借りた田の田植え風景の写真などが飾られていて、現在でも、住民の相互交流がうまくいっていることが感じられました。

 

応急仮設住宅の入居期限と復興住宅


その仮設住宅の隣接地に、今、復興住宅の建設計画が、進んでいます。応急仮設住宅の入居期限は、当初2年間とされていました。しかし、現在の復興状況の遅れを踏まえて、平成27年3月末まで延長されました。入居期間の延長は、被災者の住宅確保という意味では、意義があります。しかし、仮設住宅の耐久性の問題や居住環境が劣悪であることからくる居住者の心と体の疲弊の問題に対し、入居期間を延長することのみでは解決策とはなりえません。仮設は耐久性に劣り、すでに基礎の杭は、ければ揺らぐ程度に劣化しております。また、例えばいわき市にある広野町住民が避難している仮設では雨漏りの報告もありました。もはや、期限を延ばすという対応は限界に近付いております。

 

復興住宅の建設計画

 

この様な、仮設住宅の老朽化に対する、ひとつの解決手段として復興住宅の建設があります。被災者の方が、「もっと恒常的な住まいが欲しい。もっと快適な居住空間がほしい」と願うのは率直な要求であるでしょう。その要望に答える形で、国・県・自治体の主導で復興住宅の建設計画が、進んでいます。大玉村の復興住宅の建設計画もその一部です。この建設計画の特徴的な点は、住民自らの意思で、現在の仮設住宅の隣接地に復興住宅を建設し、将来の暮らしに向けてひとつの方向性を探り、その実現に向けて活動しているということだと思います。このような、自治会の例は、少ないと思われます。建設場所は、大玉村にある安達太良応急仮設住宅4区画のうち、必要がなくなったため取壊された2区画の跡地で、現在の仮設住宅に隣接しています。建設は大玉村が行います。建設戸数は、約65世帯分で、費用の8分の1は大玉村が負担し、8分の7はほぼ全部国で負担するようです。完成予定は、27年度中の予定ですが、自治会では、仮設の入居期限である27年3月までの完成を希望しています。それを受け大玉村村議会は、26年中の着工・完成を目標に災害公営住宅の整備を進めていくことに決定した、との報道がありました。(み・続く)

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